
障害福祉サービス事業・児童福祉サービスを専門としている広島の行政書士が令和6年4月より運用開始となった「保育士特定登録取消者管理システム」についてご案内します。
目次 1.保育士特定登録取消者管理システムの目的 2.保育士特定登録取消者管理システムの概要 3.特定登録取消者とは 4.特定登録取消者として登録される内容 5.日本版DBSと何がちがうのか 6.留意すべき事項 7.さいごに |
1.保育士特定登録取消者管理システムの目的
2003年から2024年4月1日の約20年の間に子どもへの性暴力やわいせつ行為で資格の登録を取り消された保育士は97人に上ります。
児童をこのような性犯罪から守る環境を整備するため、令和4年(2022年)6月に「児童福祉法等の一部を改正する法律」が成立し、児童生徒性暴力等を行った保育士の資格管理が厳格化されました。
令和6年4月1日より保育士を任命し又は雇用しようとするときは、「保育士特定登録取消者管理システム」のデータベースの活用が求められます。
(令和6年4月1日前から雇用されている方は対象外です)
この「保育士特定登録取消者管理システム」とは、児童に対するわいせつ行為などにより保育士資格が取り消された人物の情報をデータベースで一元管理する仕組みです。児童へのわいせつ行為を行った人への資格管理を厳格化するだけでなく、「保育士特定登録取消者管理システム」を導入して、保育士として雇用する前に「わいせつ行為などで資格を取り消された記録の有無」をチェックして児童を守ることを目的としています。
2.保育士特定登録取消者管理システムの概要
対象の職種 | 保育士 |
対象施設・事業者 | 保育士を任命又は雇用する者 |
確認後の対応 | 各事業者で適切に判断する |
利用方法 | 採用責任者がデータベースを検索して利用 |
情報の掲載期間 |
40年間 「保育士」が登録資格となった平成15年11月まで遡って掲載されます |
情報の管理 | 罰則を含め、個人情報保護法に基づいて担保されています |
登録取消し以降に改名した者がいる場合もあるので、現在の氏名と併せて旧姓や改名前の氏名(判明している場合)でもデータベースを検索しましょう。
3.特定登録取消者とは
特定登録取消者は児童福祉法第18条の20の4で下記のように定義されています。
・児童生徒性暴力等(性的虐待)を行ったことにより保育士登録を取消された者
・上記以外の者で保育士登録を取り消された者のうち、保育士登録を受けた日以後の行為が児童生徒性暴力等に該当していたと判明した者
法施行前の取消や、法施行前の行為も含み、幼児・児童に対するわいせつ行為等で保育士登録を取り消された者が該当します。
※令和6年4月1日前より継続して雇用されている方は対象外です。
4. 特定登録取消者として登録される内容
・氏
・名
・生年月日 ⇒生年月日
・登録番号 ⇒登録簿の保育士登録番号
・登録日 ⇒登録簿の保育士登録日
・登録者 ⇒登録簿の都道府県名
・取消年月日⇒保育士登録の取消年月日
・取消事由
※特定登録取消者だと判明した場合、必ずしも不採用にしなければならないわけではありません。ただし、雇用の際の判断材料のひとつにする必要はあります。また「保育士特定登録取消者管理システム」を活用せずに特定登録取消者を雇用して事業所内でわいせつ行為があった場合に、雇用主としての責任は問われることになりかねません。
5.日本版DBSと何がちがうのか
日本版DBS法案は性犯罪者が子どもと接触する職業に就くことを防ぐ制度として2026年からの施行が予定されています。個人の犯罪歴を開示して、その人が特定の職業に適しているかどうかを判断する仕組みで、資格取り消しの管理に焦点をあてている「保育士特定登録取消者管理システム」より、適用される職業の範囲が広域となる可能性があります。
どちらも雇用の際には「社会的に信頼できる人物を選定する」という目的に基づいていますが、適用される職業や範囲が異なります。
6.留意すべき事項
≪情報を検索するにあたり留意すべき事項≫
採用責任者がデータベースを使って採用内定予定者などの情報を検索する行為は、個人情報保護法第20条第2項第1号に定められた「法令に基づく場合」に該当し、したがって「本人の同意は不要」となります。
ただし、データベース検索の結果を基に採用を見送る決定を行う可能性があることを考慮し、採用公募の段階で、保育士の採用を希望する応募者に対して、採用内定前にデータベースを検索することや、その結果、特定登録取消者に該当した場合は採用しないことがあり得る旨を書面などで事前に通知することが望まれます。加えて、特定登録取消者に該当する場合には、その旨を事前に申告するよう求めることが推奨されています。
≪確認を怠った場合に起こり得ること≫
確認を怠ったことに対する罰則はありません。
ただし確認をせずに採用した者が、なんらかの理由による自治体の確認により特定登録取消者であることが判明した場合、基準人員を満たさないなど事業に影響を及ぼすことが考えられます。
「保育士特定登録取消者管理システム」を活用して、児童の健全な育成・事業の継続を守るためにも「保育士特定登録取消者管理システム」を活用しましょう。
≪HPへのアップロードについて≫
また関係事務連絡等やシステムのURLをHP等にアップロードすることはこども家庭庁より禁止されています。こちらもご留意ください。
7.さいごに
「保育士特定登録取消者管理システム」を活用して、児童の健全な育成、従業者の方々が安心して働ける職場づくりを目指しましょう。
また性的虐待に限らず不適切な発言・療育を目撃した従業者の方は上司等に相談し市町村等に通報しましょう。通報は義務であり、通報したことを理由として解雇その他不利益な取り扱いを受けることはありません。